マーケティングについて考えるときによく出てくる「ペルソナ」という用語ですが、これはいったい何を意味しているのでしょうか。架空の人物像であるこのペルソナについて、基礎知識や作り方などの詳細についてみていきましょう。
ペルソナ設定とは
ペルソナとは「仮面」を意味するラテン語です。マーケティングでいうペルソナとは、自社のサービスを利用してくれる架空のユーザーの人物像です。このペルソナを決定することをペルソナ設定といいます。架空のユーザーであるペルソナを念頭に、商品やサービスを企画したり販売したりします。
ペルソナの基礎知識
ペルソナとは、心理学で使われる用語です。古典劇で仮面をつけて芝居をする役者に由来する言葉であり、心理学者のユングが「人間が社会生活において、求められた役割を演じる機能やその一面を指す概念」をペルソナと定義しました。
ターゲットとペルソナの違いとは
ターゲットとは、属性によってマーケティング対象を決めたものです。年齢・性別・住んでいるエリア・既婚か未婚かなどといったものがそれにあたります。「40代既婚男性、大阪府在住」といったものがターゲットの例となります。
一方、ペルソナとは、職業・趣味嗜好・家族構成・性格・人間関係・習慣・好きなサイト・これからの課題など、詳細な人物像を設定したものです。その人物がこれまで歩んできた人生を、ストーリーにして考えていきます。「42歳、氏名〇〇〇〇、大阪府北区の分譲マンションに在住、年収は600万円、妻と高校生・中学生との4人暮らし、趣味はランニング、犬を飼っている」といったものがペルソナの例です。
ペルソナ設定をするメリット
ペルソナをあらかじめ設定しておくことで生まれるメリットはたくさんあります。その代表的なものについて解説します。
ユーザーの視点に立てる
ペルソナ設定をすると、架空の特定の人物のニーズが見えてきます。「〇〇したい」「△△になりたい」といったことが、マーケティング戦略に生かせます。
顧客のニーズを正しくつかんでおくことが、商品開発やウェブサービスが成功するかどうかを左右します。ユーザーの気持ちになってその視点で考えてみることが、大きな意味を持ってくるのです。
訴求力のあるアプローチができる
ペルソナを作成するときには、ただひとりの人物にまで絞り込みます。そうすることで、そのペルソナが送っている生活や抱える問題が浮き彫りになっていきます。その結果ペルソナがもっとも求めていることが見つかり、その人物に刺さるメッセージや商品は何なのか、深く考えられるようになります。
社内で共通認識が生まれる
ペルソナの設定があいまいだと、社内外でプロジェクトに携わるそれぞれが考えることに統一感がなくなってきます。ただひとりの人物について訴求できる商品やサービスを作るためには、多くのメンバー間で認識のズレや違いをなくしておく必要があります。ペルソナの設定は、そのズレの解消のためにおおいに役立ちます。
うまくペルソナ設定をするには
ペルソナの設定が大切なことはわかりましたが、どのようにすればうまくペルソナ設定ができるのでしょうか。以下のようなことを念頭において、ペルソナ設定をしていきましょう。
データ分析をする
すでに展開している事業であれば、それまでに蓄積されたデータがあります。まずはそういったものを活用しましょう。商品のリピーターになってくれている顧客、興味を持って会員登録をしてくれた人などのデータを分析します。そこから見えてくる人物像は、ペルソナの設定にたいへん役立ちます。
またウェブサイトにアクセスしてくれた人に関するデータも意味があります。アクセスデータの分析には、専用ツールを使いましょう。どのようなものに興味を持っている人なのか、どの地域に住んでいる人なのかといったことが割り出せるでしょう。ペルソナ設定には、こういった情報も盛り込んでいきます。
営業担当者の話を聞く
顧客にじかに接する営業担当者がいるなら、ぜひ彼らの意見も取り入れましょう。顧客が本当は何を考えているのか、何を望んでいるのかといったことが営業担当者には見えています。顧客が意識していないようなことが、営業担当者にはわかっている可能性もあります。
ヒアリングやアンケートを利用する
すでに商品やサービスを使ってくれている顧客に、アンケートやインタビューをするのもいい方法です。優良顧客と思われる人たちに、きたんのない意見を聞いてみましょう。彼らのデータも、ペルソナ設定に重要な役割を果たします。
インターネットで情報収集する
またインターネット上にあるさまざまな声を収集することも、ペルソナ設定に役立ちます。ツイッターやInstagramなどのSNSやリアルタイム検索、問題解決サイトなどをチェックしてみましょう。自社の商品やサービスだけでなく、競合他社のものも広く参照してペルソナ設定に活かします。
政府やシンクタンクのデータ利用
政府や国内外のシンクタンクなどが取りまとめた、いわゆるビックデータの活用も積極的におこなっていきましょう。ペルソナの設定はもとより、業務で将来的に講じていくべきことがわかり、製品開発・販売促進・サポート・コンプライアンス・コスト削減など多方面に生かすこともできます。
ペルソナの作り方
ここからは、ペルソナの作り方について解説します。難しくとらえすぎず、まずはこれらの項目をひとつずつ考えていきましょう。
人物属性
ペルソナについて、属性を詳しく設定していきます。氏名・年齢・性別・職業・年収・家族構成・出身大学・居住エリアなどについて決めましょう。
パーソナリティ
ペルソナの性格・生活での困りごと・持っている悩みや口癖など、人柄や個性を表す内容についても設定します。
生活スタイル
平日や休日の過ごし方・通勤時間・就寝時間・食生活の内容・趣味・情報を何から得ているか、どのデバイスを使っているかなど、そのペルソナがどんな生活をしているのかを決めます。
人間関係
家族構成・家族との関係・友人の数・どのくらい友人と会っているか・どんなコミュニティーに属しているか・どのSNSを使って交流しているかなども細かく設定しましょう。
流行への興味や関心
世の中で流行しているものへの興味がどれぐらいあるか、新しいものがどれぐらい好きかも重要な項目です。
考え方
物事を決定するときに大切にしているものは何か、どんな体験に喜びを感じるか、自分の芯をどれくらい持っているかなどを探ります。
ここまで決めてきた項目を整理し、整理されたデータをもとにペルソナを完成させます。
具体的な人物が立ち上がり、その人の生き生きとした顔が見えるようになるとペルソナ設定は成功です。
ペルソナを活用する
設定したペルソナは、以下のようなシーンで積極的に活用していきましょう。
広告を出す媒体の最適化
ペルソナの性別や年齢・職業などによって、よく使用するアプリやSNSやメディアは異なります。ペルソナが若者なら動画共有サイトに動画広告を出す、ブログ好きの主婦であればブログにアフィリエイト広告を出すなどを検討しましょう。ペルソナによって違う閲覧メディアなどをもとに、広告を出す媒体を最適化していくのが効果的です。
ウェブサイトのリニューアル
決定したペルソナの好みや閲覧メディアなどと、現行ウェブサイトとの間に乖離がないかチェックしましょう。デザインや色合い・文字の大きさ・ボタンのサイズや見やすさ・テキストと画像の割合などを細かく調整していきます。
そのペルソナが閲覧しやすいウェブサイトを作ることが、コンバージョン率のアップにつながります。必要があれば、ウェブサイトの大幅なリニューアルもおこないましょう。
良質なコンテンツ作り
ペルソナが決まったら、その人物が持つ悩みや問題を解決するコンテンツを作成していきます。記事で使用するキーワードなども、そのペルソナの生活シーンを想定し、多く検索するものに合わせて作り変えることも検討しましょう。
ペルソナ設定の注意点
ペルソナを設定する際には、じっくりと情報収集するとともに、以下のようなことに気をつけながらおこないましょう。
思い込みや先入観を排除する
自分たちにとって都合のいいユーザー像を、ペルソナにしてしまうことは避けましょう。商品やサービスに思い入れが強いとそうなってしまうことがありますが、理想のユーザー像=ペルソナではありません。ペルソナは現実の顧客像を当てはめて設定しましょう。
具体的な情報を盛り込む
漠然としたイメージではなく、できるだけ具体的な情報を盛り込みましょう。数字や実在するものを入れることが大切です。「多分〇〇なはず」というのではなく、実在するただひとりのユーザー像を作成します。
見直しを定期的にする
ペルソナ設定は、最初に一度おこなえばいいというものではありません。ユーザーのニーズは、時代の流れとともに変わっていきます。定期的にペルソナを見直し変更していくことが、世の変化に柔軟に対応することにつながっていきます。
例えば当初は「30歳男性、年収500万円。妻と乳児の3人でマンションに住んでいる」というペルソナ設定だった場合でも、その後数年が経過すると「35歳男性、年収600万円、妻と保育園児・幼児・乳児の5人でマンションに住んでいる」というふうに変わっているかもしれません。
「養育する子どもが増えたため手狭になり、一戸建てへの住み替えを考えている。子どもにはよい教育を受けさせたいため、小学校受験や中学校受験についても妻と話し合うようになった。妻はパート勤務を始めようと考えている」などという変化があれば、それを商品やサービス開発へと生かす必要性が出てくるのです。
BtoBの場合は複数のペルソナ設定が必要
企業が企業に対して商品やサービスを提供するBtoBの場合は、購買に至るまでに窓口の担当者、システム担当者、決裁者といった何人もの人物が関わります。その場合はそれぞれの人物に対してのペルソナ設定が必要となります。上に挙げた一般的な要素に加えて、所属する部署・役職・勤続年数・業務内容・業務の目標や課題なども掘り下げましょう。
まとめ
マーケティングで得られる成果を最大のものにするためには、ペルソナの設定が重要な役割を果たします。たったひとりのペルソナを設定することにより、それを社内で共有し、さまざまな視点から深掘りしていくことができるようになります。
そのペルソナが求めているものは何なのでしょうか。商品なのか、商品がもたらす価値なのか、悩みの解決なのか、分析をするのは簡単なことではありませんが、戦略を立てるのにペルソナはたいへん有効です。
ペルソナ設定を的確にできれば、広告費などにかかる費用を抑えることも可能となります。ぜひ手間をかけて、ペルソナを設定してみてください。そして定期的に、ペルソナが正確かどうかの見直しもおこないましょう。
それがユーザーにとっての、真に魅力的な商品やサービスを作り出すことにつながっていきます。
コメント